2015/11/30
ミュージシャン志望のMさんに、話したこと

  音楽の話で盛り上がる

 先日、大阪の鑑定にいらっしゃった、Mさん(24歳 男性)のお話です。

 Mさんは、現在会社員ですが、ドラマー(ミュージシャン)になる事を夢見ています。

 毎日、一生懸命に練習をしているという事で、作曲家でもある私と、音楽の話で盛り上がりました。

 その中で私は、次のような話をしました。

  スタジオミュージシャンの話

 「ドラマーになるなら、是非、スタジオミュージシャンにも、なって下さい」

 そう言って私は、私の作曲家時代の話をしました。
 (25~40年前の私は、手相家であると同時に、作曲家でもあるという生活だった)

 *スタジオミュージシャン・・レコーディングの為に呼ばれる、一流の演奏技術の認定を取ったプロ演奏家。

 当時彼らは、一曲2万~5万円ぐらいで演奏し、評判のいい演奏家は1日に2~3曲も声がかかった。

  今では「打ち込み」が主流ですが、一昔前は、「生のレコーディング」ばかり

 今ではCDのバックの演奏は、コンピューターでの打ち込みが主流ですが、私の曲を、よくレコーディングしていた25年ぐらい前までは、演奏家が集められてレコーディングしていました。

 私の曲は、超一流の編曲家の、萩田光雄さんや、林哲司さん、船山基紀さんなどの、豪華メンバーにも編曲してもらっていました。
 例えば、萩田光雄さんは、『シクラメンの香り』の編曲で、レコード大賞編曲賞を受賞しています。

 私の曲では、
 『あの頃に帰りたい』(西谷泰人 作曲 松本隆 作詞) が萩田光雄さんの編曲。
 『へのへのもへじ』(西谷泰人 作曲) が林哲司さん編曲、という風です。

  レコーディング風景

 レコードやCDが飛ぶように売れていた一昔前は、レコーディングスタジオでのレコーディングが、盛んに行なわれていました。

 制作側は、高価なスタジオ代を節約する為に、一曲につき、3時間ぐらいしかスタジオを押えていません。
 その間に、大急ぎでやり終える訳です。

 その為・・・。
 アレンジャ-(編曲家)が、レコーディングする曲のアレンジ(編曲)をした譜面を、写譜屋が、各パート用に清書したものをもって、レコーディングスタジオに時間ぎりぎりに駆けつけます。

 ミュージシャンは、スタジオのマイクの前でチューニングし、ヘッドホンを付けて、マイクチェックをする。

 まずは、リズム体、と呼ばれる、ドラム、ギター、ベース、ピアノ・シンセなどキーボード、また管楽器などが、一斉にレコーディングです。

 準備が出来たところで、アレンジャ-が指揮者台に登場し、ヘッドホンを付けて、タクト(指揮棒)で譜面台をコンコンと叩いて、

 「こんなテンボで行きます。曲調はこんな感じで」
 とだけ告げる。

 一つ付け加えておけば、各演奏家の譜面には、最低限の事しか書いてありません。
 ギターのパ―ト譜には、コード(和音のこと)進行しか書いてない、なんて事はざらでした。

 そんな場合は当然、全て即興で、ギタリストは間奏なども含め、弾かなくてはなりません。

  演奏開始

 そして指揮者のタクトに合わせて、レコーディング開始。そして3分ほどで終了!
 本当に感動的な作品になって、出来上がり。

 驚くのは、全員、初見(始めて譜面を見る)であり、練習・リハーサルなどナシにも関わらず、間違える演奏家が一人もいないことです。

 そしてもっと驚くことは、ミュージシャンは誰一人として、どんな曲(メロディー)の演奏をしているのか知らないで弾いている、という事です。

  後に、自分の演奏を街で耳にする

 後に、街角で流れているヒット曲を聞いた時、

 「あっ、これ確かオレが弾いた曲だよ」
 などと分かる。

 それくらい彼らは、演奏の達人なんです。

 そして、続いてストリングス(弦楽器)のメンバーが10人以上入り、チューニングをし、ヘッドホンをして、マイクチェックをし、既にレコーディングが済んでいる「リズム体」の音に合わせて、演奏する。

 そして一発勝負。
 3分ほどで、これも録音終了。
 間違える演奏家は、1人もいません。

 もちろん、先ほどのリズム体のメンバー同様、ストリングスのメンバーは誰一人、どんな曲を演奏しているかなど、知る由もありません。

 そうしてストリングスの音が加わると、曲は、更に感動的な作品に仕上がります。

 そして、その音源を持って、後日、レコーディングスタジオより格安の、ミキシングスタジオに移動して、ミキシング(各楽器の音量調節)を行ないます。

 オケ(バック演奏)が完成したら、後日、歌手が、歌入れ用のスタジオで“歌の収録”をします。

  生の演奏の音は、最高に感動的

 ところで、そのレコーディング・スタジオでのレコーディングの際の、生で弾く演奏を、ガラス張りのコントロールルームの巨大なスピーカーで聞く時の音は、実に感動的なものです。

 それをミキシング作業(各楽器の音のバランスを整える作業)をして、発売する為の、レコード盤や、CD用に仕上げるのですが・・・。

 レコードになると、スタジオで聞いていた音とは、感動が半減。
 CDに至っては、5分の2ぐらいの感動になって聞こえます。

  レコーディングの音の美しさを、料理に例えると

 レコーディングの音の美しさを、料理に例えるとこんな感じです。

 出来立ての熱々の生の美味しい料理の感動が、それをインスタント食品に加工して、電子レンジでチンして暖めたものを食べるのと、同じようなものです。

 それぐらい、レコードやCD化すると、生音とは別物(別の音)になっています。

 もっとも最近では、レコーディングの時の、生の音に近づけようと、技術革新が進み、かなりリアルに聞こえるようになって来ましたが。

 という訳で、そんなレコーディングの話を、ドラマー志望の彼にすると、頷(うなづ)いて聞いていました。
 彼の、何かの参考になれば幸いです。

 今日は、懐かしい一昔前のレコーディングの話を、皆さんにもご紹介しました。
 

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